「今の生活者に何が響くのかが掴みきれない」――。新商品を企画するなかで、こうした深い悩みの声をよく聞きます。
生活者の価値観が驚くほど移り変わる現代だからこそ、これからのものづくりには、その時のデータを見るだけでなく生活者の声を「知りつづける」ことが必要です。
今回は、インサイトマーケティング事業の責任者を務める中山宏成と、事業部を牽引する早川将司の二人にインタビュー。単なるデータリサーチツールの枠を超え、作り手と生活者が手を取り合う顧客共創型のものづくりと、「Makuakeインサイト」が本当に届けたい価値について語り合ってもらいました。
なぜ今、生活者の「本音」が必要なのか?好みがバラバラな時代に選ばれる商品づくり
ー 現代の新商品開発において、ものづくり企業が直面している壁や生活者のインサイトが今これほど強く求められている背景について、どのように捉えていますか。
中山宏成(以下、中山): 外部環境の変化が非常に激しく、企業は「より高付加価値で高利益な商品開発」をしなければ生き残れない時代を迎えています。適切な利益を確保するためには「生活者が何に困っているのか」を徹底的に捉えて、確実に刺さる商品を開発しなければなりません。しかし、中堅以上のメーカーをはじめとする多くの製造企業において、実際に商品を開発している担当者が「エンドユーザー(生活者)と直接接する機会」は非常に少ないのが現状です。
特に、間に卸や小売が入るビジネスモデルだと、エンドユーザーの詳細な解像度がなかなか上がってきません。「高付加価値な商品を作らなければならないのに、ターゲットとなる生活者像の解像度が低い」という点が、構造的な課題になっています。これこそが、なぜ生活者のインサイトを知ることが重要なのかという問いの裏返しです。良い商品を作ろうとする中で、顧客理解が不足していれば、本当の意味で生活者に喜ばれ、かつ適切な利益を生み出せるものづくりは不可能です。
早川将司(以下、早川): 根本にあるのは、現代における生活者の多様化が極限まで進んでいることです。かつてのように「20代女性向けだからこれを作れば売れる」という大雑把なセグメンテーション(属性分類)は通用しなくなっています。特定の層、例えば20代女性を狙って作った商品が実は40代女性に響いたり、想定外のターゲット層に購入されたりするなど、予測が非常に困難です。ファッション業界でも「シーズンレス」や「ジェンダーレス」といったトレンドが広がっているように、個人の多様な価値観を社会全体が許容する時代になっています。必勝パターンが存在しないからこそ、一人ひとりの生活者の声を丁寧に聞かなければなりませんが、多くの大企業や中小企業がそのリアルな声を拾う手段を持っていないという深い悩みを抱えています。

ー 既存のファンを抱える大企業やメーカーでも、あえて「Makuakeインサイト」を活用して「Makuake」上のサポーターの声を聞こうとするのはなぜでしょうか。
早川: 企業側に「既存顧客の枠を超えて、より広い市場や新しい客層を開拓したい」という強いニーズがあるからだと思います。既存のファンだけを対象にリサーチをしても、次にアプローチしたい新しいターゲット層の本音までは見えてきません。自社ではアプローチできない「その商品を本当に喜んで使ってくれるポテンシャルを持った人たち」の声を聞き、自社の仮説を市場に適合させていきたいという目的において、当社のプラットフォームが非常に有効に機能しています。
中山: 例えば、定番商品のマイナーチェンジであれば自社内のデータで十分対応できますが、持続的な事業成長のために新しい市場へ販路や顧客層を拡張しようとした時、既存のファンにアンケートをとっても「新しい市場のことは分からない」という壁にぶつかります。その「自社ではまだ見えない未知の領域」に対して、仮説を検証し、生活者の本音を聞き出すためのツールが「Makuakeインサイト」であり、実際にテストマーケティングとして先行販売して反応を試せる場所が「Makuake」というデビュープラットフォームです。これまで接点のなかった新しい顧客層を開拓し、新しい挑戦における確信をつくりに行くことこそが、私たちが提供している本質的なバリューです。
AIの予測データだけでは動けない。社内の意思決定を後押しし、自信を持って一歩を踏み出すための「生活者の声」
ー AIの進化によって商品アイデアの初期案の作成などは容易になった一方、まだ世に出ていない革新的な新商品の文脈では、実在する生活者の「一次情報」の重要性が増しているという声も聞こえてきます。この点についてはどうお考えですか。
中山: 商品開発のプロセスにおいて、「人間が価値を発揮すべきポイント」が変わってきています。初期アイデアを大量に生成する作業はAIが瞬時に代替できるようになりましたが、問題は「結局、どれが今のマーケットに求められていて、本当に売れるのか」というジャッジの局面です。企業の決裁者も、AIのデータだけを盲信して巨額の投資判断を下すことはできません。
最終的な意思決定を誰に委ねるべきかとなった時、やはり実際の買い手であり、最も生々しい「一次情報」を持っている生活者に直接フィードバックをもらうしかありません。「ターゲットとなる『Makuake』のサポーター100人に調査したところ、実在する人物たちがこのような具体的な理由で『欲しい』と回答しています」というエビデンスがあれば、社内稟議を通す際の納得感の強さが全く違います。この実在する生活者の一次情報の重みこそが、今まさに私たちが提供できている独自の価値です。
早川: 加えて、私たちは「PDCAサイクルを圧倒的なスピードで素早く回す環境」を提供しています。従来のプロセスであれば、「Makuake」でプロジェクトを実施して初めて顧客像が見え、その後一般市場へ出す際にもう一度ターゲットを検証するというステップを踏んでいました。しかし、「Makuakeインサイト」を組み合わせることで、「Makuake」でデビューする前の段階でサポーターのデータから勝ち筋を掴み、確信を得てプロジェクトに臨むことができます。これまでは一般販売を開始して1年ほど経ってようやく見えていた検証結果が大幅に前倒しされ、同じ期間内でサイクルを3回転も4回転も回せるようになります。本格販売へ移行するまでの調整やチューニングを、圧倒的なスピード感で実行できることこそが事業者が求めているポイントです。

ー 実際の事例の中で、生活者の声が事業者の意思決定や社内プロセスにブレイクスルーをもたらした具体的なエピソードがあれば教えてください。
中山: 非常に示唆深かったのが、家庭用日用品メーカーの事例です。企業戦略として「高付加価値な新商品開発」へ舵を切る中、ボトル洗い用の新商品を開発し、社内としては「もうこれでいく」という空気感でした。しかし、いざ「Makuakeインサイト」で生活者にぶつけてみると、コメントで「貴社ならもっとすごい工夫ができるはず」という期待の声やデザインに対する辛口な本音が複数届いたのです。
メーカーにとって、予定していた一般販売のスケジュールを遅らせるというのは非常に重い判断です。しかし、もしそのまま市場に突入して大量の在庫を抱え、市場に受け入れられなかったら時間とコストのロスになっていました。熱量のある生活者が忖度のないリアルな意見をぶつけてくれたからこそ、サンクコスト(埋没費用)に縛られず、勇気を持って一度立ち止まり、商品をブラッシュアップするという正しい意思決定ができた。これはもの凄く大きな価値です。
早川: 企業組織において、担当者個人の「私はこれが良いと思います」という主観的な意見だけでは、なかなか社内の承認や稟議を通すのは難しいのが現実です。しかし、そこに実際の生活者(サポーター)の生々しい声やデータが加わることで、客観的で強力なエビデンスに変わります。結果として、社内の上申プロセスや稟議が驚くほどスムーズに進むようになったという喜びの声は、多くの事業者からいただいています。
既存のリサーチサービスとの違い。回答者の熱量
ー既存のリサーチサービスと比較した際、「Makuakeインサイト」ならではの最大の特徴、そしてサポーターの属性特性はどこにあるのでしょうか。
早川: 極論を言えば、実際に買ってくれた顧客に対するアンケート調査だけであれば自力でも実施可能です。だからこそ、「Makuakeインサイト」の他社に真似できない唯一無二の独自の強みは、「検討したけれど買わなかった未購入者(見込み顧客)」に直接リーチして本音を引き出せるという点にあります。
もう1つ大きな違いとして、「Makuake」サポーターの「回答の熱量の高さ」が挙げられます。一般的なリサーチパネルに登録しているモニターは、どうしてもポイントや報酬などの謝礼を得ることが主目的になりがちで、回答が機械的になったりノイズが混ざりやすかったりします。しかし、「Makuake」のサポーターは、そもそもプラットフォーム上で「新しいものやストーリーとの出会い、応援購入のプロセスそのものを楽しんでいる生活者」です。リサーチに対しても非常に前向きで、バイアスやノイズのない、純度100%の本音のリアルな声が集まります。
中山: クライアント企業が最も驚き、喜んでくださるポイントは、自由記述(テキストコメント)の圧倒的な具体性とボリュームの多さです。一般的な市場調査サービスだと、事前に設計した仮説の答え合わせをするためのマクロデータを集める傾向が強いですが、当社のリサーチで集まるのは、生活者一人ひとりの生々しい「N=1のストーリー」です。「私は日々の生活のこういう具体的なシーンで困っていて、だからこの機能が欲しい」といった、個人のライフスタイルに根ざした非常に具体的なテキストが自由記述欄を埋め尽くします。
当社はリサーチの際に特別な報酬を付与しないケースも多いのですが、それでも驚異的な回答率と熱量でフィードバックが返ってきます。「アタラシイものづくりのプロセスに自分も関わりたい」「一緒にブランドや商品を育てたい」というピュアな応援のモチベーションを持っている方が「Makuake」のサポーターには多いと感じます。この「ものづくりに参画したい」という強い想いこそが、質の高い膨大な自由記述を支えている最大の理由です。
早川: 「Makuakeインサイト」のアンケート結果を分析していて非常に面白いのは、「なぜ購入したのですか?」という設問に対して「価格や割引率」と答えるサポーターが全体の2割程度にとどまるという点です。残りの大部分のサポーターは「開発のストーリーに共感したから」「実行者の新しい挑戦を応援したいから」という情緒的な理由を具体的に記述してくれます。このデータ自体が、「Makuake」の生活者属性が一般的な消費者とは決定的に異なっている何よりのエビデンスです。

単発の新商品発売イベントで終わらせない。「知りつづけ、売りつづける」プラットフォームへ
ー 今後、「Makuakeインサイト」という事業を通じて、中長期的にどのような世界(ビジョン)を目指していきたいか、展望をお聞かせください。
中山: 「顧客共創型の新商品開発」をスタンダードにしていきたいと考えています。単に仕様を決める段階だけでなく、商品が市場にデビューし、売れ始めるまでの全プロセスを生活者と共に創り上げていく。これこそが、私たちが本当に期待されている役割です。
具体的には、デビュー前のプロセスにおいて、商品開発の各フェーズで「いつ、誰に、何を問いかければいいのか」という標準的なフレームワーク(型)を確立したいです。単なるアンケート調査という手法の提供にとどまらず、データの解釈や活用のプロセスそのものを事業者にインストールしていきたいと考えています。
早川: 顧客理解を「点」で捉えるのではなく、「線」として「知りつづける」ことが決定的な価値を持ちます。現代において、生活者の価値観やトレンドは凄まじいスピードで移り変わっています。たとえある一瞬(点)において、生活者のインサイトを完璧に捉えることができたとしても、その3ヶ月後や半年後には、その人の趣味嗜好は全く別の形に変化している可能性が非常に高いです。常に生活者の最新の状態や心理変化を定点的にトラッキングし、対話を「つづける」からこそ、変化の激しい市場において常に半歩先の最適なアプローチを打ち出し続けることができます。
事業者が「Makuakeを一発の打ち上げ花火(単発のイベント)で終わらせたくない」と本気で願うのであれば、デビューの場である「Makuake」と、顧客理解のツールである「Makuakeインサイト」は、絶対にセットで活用されるべきです。事前のニーズ検証や事後のボトルネック分析を徹底的に行い、地に足をつけた持続的な事業成長を実現していく。この認識を市場のスタンダードとして確立していきたいです。
私たちは「調査」や「リサーチ」という無機質な言葉を、もっと温かい「生活者との共創」の世界観へとアップデートしたいと考えています。生活者は応援の気持ちを込めて購入し、声を届け、事業者はそれに応えて商品を磨き、私たちも全力でそれを世の中に発信していく。単なる商品の売り場ではなく、熱量を持った「ものづくりの共創の舞台」として「Makuake」を捉えていただけるような世界観を、中長期的にしっかりと社会へ浸透させていきたいです。